夢で逢えたら

どうにも妙な夢を見た。

 

久方ぶりに、強烈な「雰囲気」のある夢だった。もう夢のその「雰囲気」は感覚的には消えてしまったけど、起きたてに凄まじい虚無感と切なさとが襲いかかり、そしてなぜか寂しくなった。

 

アラームで起きて、隣の彼に「所詮夢じゃん」と言われたけど、そうじゃない、そんな風に強く断定しないでよ。これからの生活を共にするのがあなたでよかったよ。こんなにもほっとしたのだから、そのまま抱きしめて褒めてよ。そんな理不尽を心の中で思った。

 

温かく大きい彼の手を握って、夢の中の人物と少し似てることに多少不満を抱きつつ、やっぱり現実に居るのがあなたで良かったと思う。

 

今年の夏は、毎日のように夕暮れ時に感動している。

 

例えば、地元の夕暮れ時、ご飯の匂いと風と空とか。

はたまた、実家の夕暮れ時の温泉の景色とか。

風に色がついてるみたいに、何度も私を塗り重ねていく。

私は何度だって黄色や赤、橙に染まる。

 

 

 

恋人がもうすぐ、恋人でなくなる。

私はもうすぐ、多分、名字が変わる。

 

もう何十年も連れ添いあったような私達。でもなぜか、ここ最近私は彼に恋をし直しているような気がするのだ。

 

私は情緒に生きていると思う。

 

だから、毎日絶対に美しいと思うものを無意識に見つける癖がある。毎日美しい何かに囲まれて息をしているので、頭の中は幻想でいっぱいだ。だからいつまで経っても大人になれない、汚い大人になれはしない。

 

その頭の中の幻想の中で、彼を想っては泳がせる。まだ見た事がない、きっと現実には無いかもしれない私だけの美しい世界を創り上げ、私はその中に彼を放つのだ。

 

私の手首はアホみたいに細く、また手の形や指は我ながら恰好がよいと思うのだが、その手が紡ぐ物語があってもいいと思う。

 

多分、私は何だかんだと言いながら、死ぬまで文を書き続けるのだと思う。多分それでしか、自分の情緒を保てる術が他にないのだ。

画力があれば、絵などでも残せたかもしれないが、それほどまではないし、その上そこから続く何かしらの表現は、一枚絵では到底表しきれない。

 

書いて書いて、読んでもらって、たまに胸打たれてくれる誰かのために、私は多分死ぬまで綴り続ける。

 

書くことへの呪いをかけられたかのように、きっと死ぬまで頭の中は私だけの夜や宝石や光があり、風の色や匂いがあり、私だけの秘密の話がある。

 

それをどうにか星の砂のように恋心を重ねて撒き散らし、夢のような話がしたい。

 

 現実にそんな場所や物が無くたっていい。

私だけの中にあるものを、そのまま描く。

 

だからこれは、私だけの宝箱なの